「正直にやる。小金目当てに読者の信頼を失うほうが怖い」
「正直にやる。小金目当てに読者の信頼を失うほうが怖い」

 テレビは『関心はなかったけど、たまたま(後藤が)出ていたから見た』という人も多いでしょうから、金融の知識ゼロの人にもわかるような解説を心がけています」

 お金についての興味や勉強の熱意は千差万別。だからこそ一律に同じ情報を発信するのではなく、伝えるべきポイントや話し方も変えていく必要がある。

 後藤さんファンにはどんな人が多いのだろう。なぜここまで支持されているのか。

「金融機関も大手メディアも相手にしてこなかった『カネにならない人たち』がついてきてくれている気がします」

 証券会社や銀行では、高い手数料を払ってさまざまな金融商品を買ってくれる人が「いい顧客」だ。買わせるために、あの手この手で新商品の紹介をする。

 相場解説もどちらかといえば「上昇期待」に寄る傾向にある。大手ウェブメディアや雑誌はクライアントの絡みもあり、いいものは褒めるが悪いものには触れない(けなさない)ことが多い。

 テレビは「年金の運用成績が悪い」「投資で損した」など悪い話のほうが視聴率を稼げるので、民放が大きく報じるのはネガティブな話題——。

「日経新聞の読者は数百万人。その読者には、金融や経済を知り尽くしたプロもいます。その対極に『消費者物価指数やFOMC(米連邦公開市場委員会)などという言葉を見かけるけど、実はよくわからない』『NISAなどで資産運用をしたいが知識ゼロ』という人がいて、こちらが数的には圧倒的に多い」

「NISAって何?」「投資信託はどれを買えばいいの?」という情報はあっても、経済の流れを自分で判断できるようになる力が養える場はなかった。

 後藤さんの言う通り、この層を鍛えてもカネになりにくいのである。NISAで低コストなS&P500の投資信託を買う「だけ」の人は、証券会社の利益にはほとんど貢献しない。

 複雑に絡み合う経済動向をわかりやすく解説するのはプロでも難しい。そして経済の知識が豊富な人が、初心者に理解させるスキルを持っているわけではない。

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「釣り見出し」なし、断定口調は恥ずかしい