コロナ禍で飲食店が不況にあえぐなか、新宿歌舞伎町のホスト街は「これまでで一番活気がある」という。街中には派手な広告トラックが走り回り、夜になればギラギラした看板に明かりが灯る。
「売れたいなら倫理モラル良識全部捨てろ」
そう吐き捨てるのは、「天使レイ」の源氏名を使うホストだ。歌舞伎町のホストクラブの世界を描いた漫画『星屑の王子様』のキャラクターだが、こうした非倫理的な理念は決して漫画の世界だけのものではないという。
4月下旬、歌舞伎町のホストクラブに勤務する男が売春防止法違反で逮捕された。源氏名は「森のくまさん」。女性客に“立ちんぼ”行為をそそのかした疑いがかけられている。この男のほかにも、1月には女性客をソープランドで売春させたとして元ホストの男が売春防止法違反容疑で逮捕。スカウトの男やソープランドの経営者ら計13人が捕まるなど、騒動となった。
ネオンの裏側はどうなっているのか。元キャバクラ嬢で、『星屑の王子様』を発売した漫画家の茅原クレセさんに歌舞伎町の実態を聞いた。
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――キャバクラを題材にした『ヒマチの嬢王』に続いて、夜の街をテーマにした作品を描いています。茅原さんはどうして夜の街に興味を持ったんですか。
漫画家になる前に私自身も働いていたのですが、その頃から夜の街の独特な雰囲気が好きで、作品にしてみたいと思っていました。働き始めたきっかけは友達が地元のスナックで働いていて、誘われたことです。当時は一人暮らしで、国家試験の受験勉強中。短時間で高い時給なのがちょうどよかったんです。漫画家になるために上京してからも、同じような理由でキャバクラをはじめました。
――最初から歌舞伎町へ行ったんですか。
日和ってしまって、23区ではあるけれど、歌舞伎町からは少し外れた街でスタートしました。何でもはじめると頑張ってしまうタイプなので、売り上げを上げるにはどうすればいいのか研究したりもして。あと、黒服さんが好きだったので、好かれるために売り上げを上げることを頑張ったり(笑)。売り上げが上がるようになると、お客さんからもっといいキャバクラを紹介されたりして、どんどん移動していきました。飽きっぽいので、一つの場所にとどまることができなくて。
――そうした経験があったから、前作『ヒマチの嬢王』が生まれたんですね。今回発売する『星屑の王子様』はホストクラブがテーマです。もともとホストがお好きだったんですか。
キャバクラ時代にホストの方が店に来てくれることがあったので、ホストの方からお話を聞いたり、知り合いになったりでなんとなく知っていました。ただ、自分からホスクラに行ったのは4年くらい前が初めてです。漫画の取材のために行きました。キャバクラと似たような感じかと思っていたのですが、システムから接客の感じまで全然違いました。