『星屑の王子様』(茅原クレセ)
『星屑の王子様』(茅原クレセ)

――ホストに深入りして、つらくなることもあると思います。それでもどうして人気は耐えないんでしょうか。

 コロナ禍もあってみんな余裕がなくなって、寂しいと感じている人は多いですよね。人のことはかまえなくなっているけど、自分をかまってくれる人はほしい。気を使って関係を築かなくてもお金さえ払えば好きなふりしてくれる。そんな楽なことはないからだと思います。


――お客さんが低年齢化するなかで、ホスト側にも変化はありますか。

 昔と今とでは、ホスト業界がずいぶん変わってしまったと周りの方は口々に仰います。お客の層、稼ぎ方が変わったことで、ホスト側も疑似ではなく本気で恋をさせる営業がメインになっているそう。

 最近は大学生ホストも増えています。お客さんがTikTokやYouTubeを見てホスクラに遊びにくるように、SNSを通してホストに憧れる子が大量に業界に入ってくる。昔は髪の毛を筋のように細い束にした「スジ盛り」がホストの定番でしたが、今はナチュラルな見た目のホストも多い。ちょっとしたバイト感覚で来ている人もいるし、多種多様になったというか、幅広いですよね。

――ホストになる人が増えることは業界的にはうれしいことなんですか。

「イケメンをどんどん集める」「若い子がどんどん頑張ってくれていてうれしい」と話していましたね。都市開発と同じように、人が増えれば増えるほど、盛り上がっていきますよね。

――キャバクラとホストクラブには違いはありますか。

 システムからけっこう違っています。どちらかというとホストはクラブに近くて、セット料金が高くなる傾向にあります。

 あと、泥沼にはまる人の割合は断然ホストが高いですね。キャバクラの場合は薄利多売というか、女の子にそんなに本気じゃない人も含めてたくさんのお客さんで成り立っていることが多いんです。でも、ホストは売れっ子であってもふたを開けると5~6人が支えているという話はよくあります。一点集中型というか。

 もちろんキャバクラにも太客はいますが、ホストのようにお金を立て替えてもらう「売り掛け」を前提としていません。おじさんは若い女の子よりもお金を持っていたりするし、女の子に比べれば、風俗業に参入して高額が稼げるようになるわけではないので。

――深く入り込む人がホストに比べると少ないんですね。

 自分の担当ホストが活躍したら、自分もえらくなったような気がする子がいるんです。それもあって、性を売ってでも、お金をどんどん積んでいく。キャバクラは、高額を積んだら性接待してくれるかどうかをメインに考える方が多いように思います。また、中高年の男性が職業を変えてすぐ高額を稼げることが少ないように、職業や環境をガラッと変えてしまうケースがまれだからだと思います。

――性差があるんですね。『星屑の王子様』はネットでも人気ですが、どんな方に読まれているんでしょうか。

 ホストに何度も行ったことがあるという方も読んでくれています。「あるある」と共感する方もいれば、「こんなことないよ」「クズしかいねぇじゃん」という声もありました。

 私の思いとしては、ホストのことをよく知らない人にこそ読んでもらいたいんです。オレオレ詐欺の啓発ではありませんが、こういう手法やハマる環境が整っている場所だということを知ってもらうことで、俯瞰して考えることができるかもしれない。だからこそギャグ調というか、ホストクラブの現状はそのまま伝えつつ、そんなにしんどい気持ちにはならないポップな描き方を意識しています。

 ただ、「楽しそうだからやりたい」と私の作品きっかけで思われることがないように表現に気をつけています。

――そのあたりのバランスを取るのは難しそうですね。

 楽しい部分を書きすぎると「やってみたい」と誘導してしまう危険性があるし、後ろ暗い部分を書きすぎると「何を言っているんだ」と反発されたりもする。そこがすごく難しいんです。どちらの面もあるので、過度に悪く描くことはしたくないし、かといって美化するのも違うと思っています。

 ただ、これまで危険な実態の詳細にフォーカスした作品ってなかったと思うんです。無知な若い子が不用意にホストの世界にはまり込んで、抜け出せない現状があるなか、ちゃんと表現し、広く伝える必要があると思って描いています。

(構成/編集部・福井しほ)

AERAオンライン限定記事

暮らしとモノ班 for promotion
「昭和レトロ」に続いて熱視線!「平成レトロ」ってなに?「昭和レトロ」との違いは?