受験シーズンも佳境を迎えております。大学受験生にとっては、暖かな春を迎えるためにも最後の踏ん張り時ではないでしょうか。
日本の最難関校、東京大学。受験生にとっては今も昔も"目標とすべき学校"と言えます。また、世界的にみても東京大学は、Times Higher Educationによる世界大学ランキング(2014-2015)では23位と、日本からは唯一50位圏内に入った大学となっています。
しかし、どこの大学であっても実際に入ってみると、良い面・悪い面が見えてくるもの。まして社会に出てしまえば、どこの大学を卒業したのかは一部の機関を除いてあまり関係がなく、東大を出たからといって勝ち組になれたり、人生において幸せが約束されるわけではありません。
東京大学を卒業し、90歳を目前にした現在も活躍されている作家・三浦朱門さんは、『「東大を出たら幸せになる」という大幻想』のなかで、自身や共に学んだ友人たち――学歴がなくとも成功した友人や、学歴を追い求め過ぎて若くして亡くなった友人など――の人生を振り返りながら、日本の受験教育のあり方に疑問を呈し、本当の教育のあり方を模索しながら人生の生き甲斐について考察していきます。
様々な旧友たちの人生を振り返るなかで三浦さんは、彼らの人生を左右してきたのは、学歴という肩書きや、受験教育によって鍛えられた模範解答を作る能力ではなく、むしろ環境に応じて自分の生きる空間を切り開いていく力や、時には運や偶然といったものなのではないかと述べます。
「人は社会的に有名になるために生きるのではない。自分の目前の問題と格闘しつつ、自分の生きる空間を切り開いてゆき、それに成功することが、生き甲斐というものではないだろうか」(同書より)
受験戦争に巻き込まれてきた東大出身者たちは、果たして幸せな人生を送ることができたのか、あるいは何が原因となり送ることができなかったのか。人生を生き甲斐あるものへと導く教育とは一体どのようなものなのか。90年近くの人生を歩んできたからこそ見えてくる、受験教育の生んだ問題点に自らの経験を持って切り込んだ一冊となっています。