一方、女性にはフリーダイヤルが用意され、男女双方がつながると会話が始められるわけだが、未成年者がこれにハマって長時間利用したことにより数十万円から数百万円という高額な料金が保護者に請求されるようなこともよく起こった。やがてはこれが、”援助交際”のためのツールへと発展を遂げる。こうして、性的非行、未成年相手の淫行の温床ともなっていった。
これを悪用した詐欺行為も横行した。例えば、利用者を欺いて特定の番号に電話をかけさせ、お金を搾取するなどの手口だ。情報提供業者が偽造・変造テレホンカードを利用し、公衆電話から自らの提供番組にかけて不当利益を得る手口などもあった。
時代の寵児であったが、しだいに逆風にさらされる。その後、NTTも規制を強めたため、うまみをなくしたアダルト業者たちが去っていくと、同じように衰退していった。加えて、インターネットの台頭である。2014年2月28日、ついに四半世紀にわたった歴史に幕を下した。最盛期には8500もあった番組数も、最後はわずか26ほどになっていたという。こうして、ダイヤルQ2の役割は終わったのだ。
その優れた先進性、利便性ゆえに悪用され、悲運の生涯をたどったとも見えるダイヤルQ2だが、ただの敗者ではない。優れた遺産もある。
例えば、NTTドコモグループのインターネット接続サービスとしてよく知られた「iモード」である。「もともとのiモードは『固定回線で情報番組を提供していたものを、インターネットに置き換えて携帯電話に提供する』発想から生まれたものだ」との指摘もある。ダイヤルQ2で培われた経験、人材も取り込んでiモードは生まれたと。
注目されるのは、有力コンテンツプロバイダーの主要メンバーはダイヤルQ2向けサービス会社の関係者であり、その他の関係者も周辺サービスの出身者や経験者であったという点だ。
今度は電話ではなく、インターネットをプラットフォームとして多様な情報番組、コンテンツを提供する。それもドコモで準備するのではなく、決済代行に徹することでコンテンツプロバイダーが、自由にコンテンツを準備して集金できる環境を保証するといった「Win-Win」の関係構築、まさにダイヤルQ2のビジネスモデルだ。
高額請求書が家に送られてきて、親に怒られた20数年前が非常になつかしい…。