「ドイツは脱原発を達成したが、EUでは送配電網が繋がっているため、再エネ不稼働時に電力が不足しても原発大国のフランスから電力を輸入できる。日本は全く状況が異なるから、脱原発はできない」という話を聞いたことがある人は多いのではないか。
これは、原発推進派が良く使う宣伝だが、客観的事実を見ると相当無理のある主張だ。
まず、ドイツは、統計でわかる2008年以降21年まで一貫して電力の純輸出国だ。21年も電力輸出54兆Wh、輸入39兆Whで、その差(四捨五入)の14兆Whの純輸出国となっている。
また、21年のドイツの対仏輸出は11.2兆Wh、フランスからの輸入は4.7兆Whで、ドイツの圧倒的輸出超過である。
さらに、電力市場における自由で公正な競争が確保されているドイツでは、各供給業者が、その時々で一番安い電力を調達して供給する。その結果、ドイツの電力輸入では、デンマークがダントツで、21年は11.6兆Whを輸入している(ドイツのデンマークへの輸出は2.6兆Wh)。
22年末~23年の冬はウクライナ危機により、ロシアの天然ガスへの依存度が高いドイツは最も深刻な打撃を受けた。一方、フランスは平時の原発依存度が70%で、ロシア産ガスへの依存度が低かったため、普通に考えると最も打撃の小さな国のはずだった。
しかし、現実には、フランスでは、主力であるはずの原発が、老朽化による事故や故障などで半数が稼働停止に陥り、停電の危機に陥った。意外かもしれないが、実はこの状況下でドイツはフランスに大量に電力を供給してフランスの電力危機回避に大きく貢献した。
ちなみに、ドイツの昨年(22年)の総発電量に占める再エネ比率は約46%で、原子力は約6%でしかない。政府は30年までに電力消費の8割を再エネで賄うという高い目標を掲げている。
前述のとおりドイツがフランスの電力を買うのはより安い電力を消費者に提供するためだが、これは日本とは全く逆だ。