究極的な結論から言えば、データがあれば、アンケートは要らない。
であれば、データを持てばいい。
学校現場のDX化を進めて日々のデータが常にアップデイトされるようにしておけば、究極は、学校現場のすべてが上位者である教育委員会や文科省にも共有され、いちいちアンケートなどをその都度とる必要はなくなるはずだ。
個人情報保護条例から懸念があるかもしれないが、そもそもこれは児童生徒の利益に関わることなのだ。本来ならば、児童生徒を守り育てるのが教員の仕事である。その教員の時間がデータ収集作業に邪魔されているのだから、アンケート業務は当然見直されるべきだと思う。
どうしても必要な「学校基本調査」を含めて、アンケートは1学期に1本くらいに絞ればいい。
もう一つ、保護者は気づかないだろうが、現場を不必要に忙しくさせている「学校を通じた作品や児童生徒の募集」という悪弊がある。
例えば、国税庁からの依頼だと思うが、小中学生に「税金の作文」を書かせ、それなりの審査員を立てて、受賞者を表彰することが行なわれている。省庁からすれば一種のPR活動であり、国民に関心を持たせる広報行為だ。しかし、小中学生は本当に「税金の作文」を書きたいだろうか……私は疑問だ。税金を納めることは国民の義務だし、その教育を行なうことは否定はしない。しかしもっと知恵を絞れば、ゲームを使って広報するようなやり方もあるのに、とつくづく思う。
ことほど左様に、児童生徒の募集や作品の募集が無数に学校を通じて行なわれるのだ。ポスターや募集要項が送られてくると、その都度、教頭が下駄箱の横の掲示板にポスターを画びょうでとめ、案内を各クラスの担任に配布する。
恐縮だが、私は校長として、学校を流通網として使う行為はほどほどにすべきと感じたので、ほとんどのポスターは貼らないで良いと教頭に命じた。もちろん、拉致問題のキャンペーンポスターなどは例外だ。
●藤原和博(ふじはら・かずひろ)
1955年、東京都生まれ。教育改革実践家。78年、東京大学経済学部卒業後、現在の株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任し、93年よりヨーロッパ駐在、96年、同社の初代フェローとなる。2003~08年、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校の校長を務める。16~18年、奈良市立一条高等学校校長。21年、オンライン寺子屋「朝礼だけの学校」を開校する。 主著に『10年後、君に仕事はあるのか?─未来を生きるための「雇われる力」』(ダイヤモンド社)、『坂の上の坂』(ポプラ社)、『60歳からの教科書─お金・家族・死のルール』(朝日新書)など累計160万部。ちくま文庫から「人生の教科書」コレクションを刊行。詳しくは「よのなかnet」へ。