ソフトバンク・椎野新
ソフトバンク・椎野新
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 トレードやフリーエージェント(FA)による人的補償、また昨年オフに初めて開催された現役ドラフトなどによる移籍をきっかけに成績を大きく伸ばす選手は少なくない。そんな中で特に今年目立つのが“元ソフトバンク”の投手の活躍だ。現役ドラフトで阪神に移籍した大竹耕太郎は5月の月間MVPを受賞するなど、ここまでチームトップの6勝をマーク。完全に先発ローテーションの中心となっている。

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 また同じ阪神では2020年オフにソフトバンクを自由契約となった加治屋蓮も鮮やかに復活。今年は中継ぎとしてここまで23試合に登板して1セーブ、6ホールド、防御率0.00と抜群の安定感を誇っている。また近藤健介のFA移籍による人的補償で日本ハムに移籍した田中正義も開幕から抑えに定着。9セーブ、7ホールドをマークし、イニング数を上回る奪三振を記録するなど大きな飛躍の年となっている。

 大竹、加治屋はソフトバンクでも一軍の戦力となった時期はあったもののその期間は短く、田中に至っては故障もあって6年間で1勝もあげることはできていなかった。それを考えると移籍が大きな転機となったことは間違いないだろう。

 そしてそんな“再生候補”となりそうな投手はまだまだソフトバンクに埋もれている可能性は高い。筆頭として名前を挙げたいのが高橋礼だ。プロ入り2年目の2019年には先発として12勝をマークし、新人王を受賞。その年のオフに行われたプレミア12では侍ジャパンにも選出されている。リリーフに転向した翌年も4勝、23ホールドと活躍を見せたが、過去2年間は調子を落として低迷。今年も一軍でわずか3試合の登板で、防御率は11.81と結果を残すことができていない。

 ただ二軍ではチームトップタイとなる4勝、防御率も1点台前半と格の違いを見せている。不調時は制球を乱して崩れることも多かったが、ここまで35回1/3を投げて6四死球とコントロールが安定してきたのもプラス材料だ。貴重なアンダースローだけにソフトバンクも簡単に手放すことはないと思われるが、本人にとっては一軍でのチャンスが多い球団の方が復活の可能性は高くなりそうだ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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2017年ドラフト組の2人の剛腕