日本のビジネスパーソンの間でよく交わされる「うちの会社は方針とかビジョンがないんですよ」。果たして、そんな会社があるだろうか。そう思っているマネジャーがいるとすると、マネジャー自身が主体的に働けていないということであろう。部下にモチベーションを持たせ、よりよく変わるマネジメントのためにマネジャーは何をすべきか。著書累計50万部超の人気ビジネス書作家・浅田すぐる氏が新著『あなたの「言語化」で部下が自ら動き出す 「紙1枚!」マネジメント』(朝日新聞出版)を上梓した。同著から一部を抜粋、再編集し、部下をもつマネジャーが抱きがちな悩み解消へのアプローチ法を紹介する。
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日々多くのビジネスパーソンの方々と関わっていると、次のようなセリフを見聞きする機会が頻繁にあります。
「いやー、うちの会社は方針とかビジョンとかないんですよね」
独立して社会人教育の世界で働くようになって10年経ちましたが、特に初期の頃は、こうした発言をする人が思った以上にたくさんいて、見聞きするたびに驚いていました。
ビジョンや理念、方針等が何もないと断言することは、「何のために働くのかという判断基準・ものさしがありません」と宣言しているに等しいからです。
そんな状態では、マネジャーとしてもプレーヤーとしても、判断や選択、意思決定することができなくなってしまいます。「何を軸に管理したら良いかわからない」と言っている人に、そもそもマネジャー業務は務まりません。にもかかわらず、「うちにはそんなのありません」と平然と言ってのけてしまう人が、どうしてこんなにも数多くいるのか……。
■「部下が自ら変わっていくマネジメント」に向けた第一歩
多くのビジネスパーソンと交流する中で、しだいに問題の所在がわかってきました。「うちの会社にはビジョンがない」と公言し、勤務先への不平不満に終始するマネジャーには、ある共通点があります。