「イエス・ミーンズ・イエス」

 これは、刑法改正に声をあげ続けた性被害当事者たちの根底にある考えだ。これは、「ノー・ミーンズ・ノー」といった、拒絶を拒絶としてシンプルに受け取れ!という立場よりもさらに性被害者の立場に立ったもので、相手の積極的な同意や参加を確認しなければいけない、というもの。スウェーデンやスペインなどの刑法は、「イエス・ミーンズ・イエス」型で、相手の積極的な同意が確認できなかった性行為は処罰するものになっている。被害の実態に沿った被害者中心主義の考えが根底にある。

 今回の日本の法案も、国際的な流れである「イエス・ミーンズ・イエス」により近づくための一歩になると思いたい。「強制性交罪」「準強制性交罪」が「不同意性交罪」となり、暴行・脅迫といったこれまでの条件に加え、心身の障害がある場合、アルコール・薬物を摂取している場合、睡眠・意識不明瞭な場合、拒絶する隙を与えない不意打ち、恐怖・驚愕させた場合、虐待による心理的反応があるとき、地位関係性が対等でないとき(教師からなど)の条項が加えられた。

 これまでの性被害では、被害者が「やめろ!」 とどれだけ抵抗したか、どれだけ「暴行」が加えられてきたかが問われてきた。それは性被害者を「選ぶ」法律だったといえる。なぜなら性被害とは、抵抗すらできない、ノーすら言えない不利な状況に追い込まれることでもあるからだ。加害者は脅したり暴力を振るったりすることもなく、からかいの延長で、笑いながら、“なごやかな空気”で、同意を取るなどは思いもよらない状況で行為してきた。今回の法案では、暴行の程度は問わないことが明文化されることになった。これによって、拒絶の意思を表明し続けたのにもかかわらず行為を継続した場合、客観的な判断要素があれば処罰対象になるものであることなどが、政治、司法の場で周知されていくべきだろう。

 今回の法案は、加害に対する客観的な認定を求めて声をあげ続けた性被害者の切実な声がベースになっている。だからこそ、何としても今回の国会で成立させてほしい。これ以上、被害者を待たせないでほしい。

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50年以上前の記憶に苦しむ性被害者も