以前から人気の細野晴臣、山下達郎らシティポップ系の名盤だけでなく、宇多田ヒカルらJ-POPヒット曲のアナログ盤も並ぶ(撮影/編集部・小柳暁子)
以前から人気の細野晴臣、山下達郎らシティポップ系の名盤だけでなく、宇多田ヒカルらJ-POPヒット曲のアナログ盤も並ぶ(撮影/編集部・小柳暁子)
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 人気アーティストの作品が「初CD化」ならぬ「初アナログ化」されている。背景にはサブスクでは飽き足りない層の多様な需要があるようだ。AERA 2023年7月3日号より紹介する。

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「Baby a Go Go」

 1990年にリリースされたRCサクセションのラストアルバムが、発売から30年以上の時を経て、初のアナログ盤としてリリースされた。

「クリアで厚みのある音、ギターのカッティングの際立ち方、アナログの音のすごみをあらためて感じました」

 と言うのは音楽評論家の原田和典さん。CDが隆盛をきわめ、アナログ盤のリリースが止まった90年代前半の名作群。それらがこのように続々と「初アナログ化」する流れがある。当時、かつての名盤が「初CD化」されていったのと逆の流れだ。

■コロナ禍の影響も

 アナログレコード専門の売り場「TOWER VINYL」を2019年から展開するタワーレコード。初アナログ化のリリースも数年続くアナログブームの流れによるところが大きいが、ブームの背景には、コロナ禍の影響もあったのではないかとタワーレコード広報部の谷河立朗さんは語る。

「自宅で過ごす『おうち時間』が増え、じっくり音楽と向き合うことでアナログを楽しむという行為の再発見、あるいは初体験した方はいたと思います。音楽の聴き方もどんどん便利になっていくいっぽうで、どうせ聴くなら一番面倒なアナログで音楽と向き合うことで得られる贅沢感、満足感もあると思います」

 初アナログ化の流れは、シングルにもみられる。モーニング娘。「LOVEマシーン」、宇多田ヒカル「First Love/初恋」などの数々の大ヒット曲が、時代を経て初の7インチのアナログ盤というフォーマットとしてあらためて店頭に並ぶ。担当の田之上剛さんはこう言う。

「アルバムという作品ではなく、シンプルにヒット曲を聴きたいという方、確実に盛り上がる曲であることでのDJ需要、当時8センチCDでジャケットデザインが縦型のものが正方形になるというデザイン面やフォーマットの変化を楽しむという層、さまざま需要があります」

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