千鳥
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 5月4日放送の『テレビ千鳥』(テレビ朝日)の内容をめぐって、ちょっとした騒動が起こった。番組内では「春服を買いたいんじゃ」という企画が行われ、千鳥の2人がセレクトショップを訪れていた。そこで大悟がある服を試着した際に、そのときの自身の姿を少々下品な表現でたとえてみせた。

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 すると、その服のデザイナーがSNSで怒りを表明した。これを受けてテレビ朝日は謝罪文を発表した。

 この件についてネット上では賛否両論さまざまな意見が出ているようだ。個人的には、デザイナー本人が不快感を表明している以上、そこに道義的な問題があるのは間違いないし、テレビ局が正式に謝罪するのは妥当であると思う。

 撮影をしている以上、取材場所のセレクトショップに対しては事前に許可を取っていたはずだ。しかし、紹介する服のブランドには許可を取っていなかったようだ。無許可で行ったことに対して当事者から抗議の声があがったのであれば、誠実な対応が求められるのは当然である。

 しかし、この番組のファンとして1つだけ付け加えることがあるとするならば、番組側としては紹介する服を馬鹿にするような意図はなかったのではないか、ということだ。

 千鳥の2人が服を選ぶ企画は、この番組ではこれまでに何度も行われている。そのときのお決まりの流れとしては、おしゃれとされるセレクトショップをめぐり、大悟がそこで真剣に服を選ぶ。しかし、なぜかおしゃれではない奇抜なコーディネートをしてしまう。それを自分で着たり、ノブに着せたりして、その様子を何かにたとえたりする。いわば、良質なアパレル商品をあえて格好悪く着こなすというふざけ方をしているのだ。

 つまり、服を着た状態の大悟やノブのことを、本人たちが何かにたとえたり、イジったりする場合、笑いの対象になっているのは服そのものではなく、それをうまく着こなせていない彼ら自身のみっともなさである。

 恐らく、この番組を楽しんで見ていた人の多くは、そのことを十分に理解していた。だから、そこに特に問題になる要素があるとも思っていなかった。大悟やノブが自分たちのおかしな着こなしに対してどういうたとえ方をしても、服そのものに問題があるというふうには見ていなかったからだ。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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千鳥の笑いの本質は「同級生の悪ふざけ」