かつて大阪府は長く財政難に苦しんでいた。自民党の太田房江参議院議員が知事だった2001年から2007年の間、府は厳しい財政状況を理由に、将来の借金に備える「減債基金」から合計5202億円を借り入れ、歳入不足を穴埋めしていた。次の知事である橋下徹氏は減債基金からの借り入れを中止。建設事業費、人件費の削減や、府議会議員報酬や定数削減などを進め、市の貯金となる「財政調整基金」は22年度には2118億円まで増加した。橋下氏の後継である吉村洋文現知事も積み立てを進めており、23年度には復元を終える見通しが立った。

 今回の政策の財源について、府財政課の担当者は「どこかの予算を切り崩すのではなく、財政調整基金に当てる予算の余剰分から出す」と話す。

「財源的にも無理がない範囲でやっており、自治体の生き残り戦略からすると、人口を獲得できる要素になるので合理的な政策と言えるでしょう。みんなが関心を持っているテーマにも、射程をぴったり合わせて打っていて、次の国政選挙に向けたアピールにもつながるのでは」(小黒教授)

 一方で「子育て支援の促進や少子高齢化の防止といった観点からみると、もっと他に手段があるのでは」と小黒教授は指摘する。

「もし本当に子どもの数を増やしたいなどの目的があるとすれば、働きながら、出産・育児を行うことができる環境整備が最も重要です。なぜなら、出産・育児を理由に女性が退職してしまう場合、1億円超もの生涯賃金を逸失してしまうことが知られているからです。このような状況のなか、伊藤忠商事が女性社員の合計特殊出生率を公表したことが話題になりましたが、府内にある企業の働き方改革を検証するため、各企業の女性社員の合計特殊出生率を含め、関連するデータを開示させることなどを行政が義務付ける。そちらのほうが子どもの数を増やす点では効率がいいのではないかと思います」

■教育に熱心な家庭が有利になる

教育格差」に詳しい松岡亮二・龍谷大学准教授(教育社会学)は、「データを取得しなければ政策の評価はできない」としたうえで、「短期的には、教育に対して熱心な家庭が有利になる政策ではないか」とみる。

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中学受験の選択にも影響か