500万円で購入したアルトコインが、一時は10 万円程度まで暴落したこともあったそうです。それでも、彼らはまったく不安ではなかったと言います。「この暗号資産は必ず上がると思っていました。明日1円になったとしても、全然心配はしていません。いずれ必ず上がりますから」と。このように、暗号資産ドリーム型は、暗号資産をとことんまで調べて、将来の値上がりを宗教のように信奉できるのです。

■信じる力が強い「億り人」のすごみ

 この夫婦は、誰かからこの暗号資産の良さを聞きつけて、自分たちでもあれこれ調べながら投資することを決めたそうです。出回り始めたばかりの暗号資産は、日本国内でテレビCMを流すような取引所では取り扱っていないことがほとんどで、海外の銀行にわざわざ口座をつくり、海外の取引所で購入をすることになりました。買える人が少ないうちに買うことで、価値が大幅に上がりやすいわけです。

 その海外の取引所が将来的にどうなるか誰にもわからない中で、数百万円を投資するのは、なかなかの勇気がいります。失敗すれば500万円がゼロになるかもしれない。でもそうしたリスクを取って、未知のものである暗号資産に投資をしたということなのです。

 私もコロナショックの頃、1ビットコインの価格が90万円のときに1つ、しばらくして75万円になったときに1つ、ビットコインを買ってみたことがあります。もっと安くなったらさらに買い増しをしようと思っていたものの、日に日に下がってついには50万円となったのを見ていると、もっと下がるのでは?と怖気づいてしまって買えず、2021年春にようやく200万円くらいまで上がったときに売ってしまいました。結果的にはプラスになったからいいのですが、2021年秋に1ビットコインが750万円を超えたときには、「なんであの値下がりしたときに、もっと買わなかったんだろう」「なんでもっと売るのを我慢できなかったんだろう」などと後悔したものです。これが凡人の思考で、大きなリスクを取る行動ができず、変に余力を残してしまうのです。

 億を超えるまで、何があっても信じて持ち続けられるというのは、億り人たちのすごみです。

 信じる力が強い彼らは、自分に暗号資産のノウハウを教えてくれた人にも、強い信頼を寄せています。暗号資産をどういうふうに売買すればいいのかわからないため、ノウハウを教えてくれる人にどこまでもついていくのです。

 彼らは誰よりも早く暗号資産の可能性を知り、そこに賭けたことで巨額の資産をつくりました。これからの時代はこのように、新しい情報をいち早く知っているかどうかで大きな違いが出るというケースが、もっと増えていくことでしょう。ただしその情報は本当に玉石混交ですから、繰り返しますが、こうすれば100%稼げるなどという夢のような話はありません。

 読者のあなたにお勧めできることとすれば、ひとりでコストをかけずに自分の得意分野を使って情報商材ビジネスをするか、さらにそうした小さいビジネスを、複数同時に行うか、株式投資をリスク管理し経験を積みながら行うか、などです。運に任せて暗号資産に賭けるのは、ハイリスクハイリターンだということは肝に銘じておきましょう。

●大森健史(おおもり・けんじ)

 1975年生まれ。大阪府出身。大学卒業後、国際証券株式会社に入社し、個人・事業法人・財団法人等の資産運用のコンサルティング業務を担当。留学・旅行業界を経て、ビザ申請や海外生活設計のアドバイザー業務に携わる。2004年6月に家族・親子・退職者・会社経営者・投資家らのロングステイなどのサポート企業として株式会社アエルワールドを設立し、代表取締役に就任。海外移住や長期滞在に関する相談実績は2万人を超える。グローバルに金融資産と居住生活をどうアロケーションするのかなど、投資家・資産家向けの海外生活コンサルティングにも精通し、サポートを行っている。

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