「海外旅行は円安・物価高の影響が非常に大きく、回復しつつあると言っても十分な戻りにはなっていません。特に出国者の増加はビジネス需要もあって、旅行の回復とはやや乖離があります。それでも、まったく旅行できなかった時期と比較して期待感はとても大きく持っています。また、国内旅行は旅行者数の復調に加え、旅行業者や宿泊施設がしっかりと利益をとれる価格設定をできるようになっています」

 横浜の会社員男性(38)は、ゴールデンウィークには家族で沖縄旅行を、そして夏休み期間には小学生の長男とマレーシア旅行を予定しているという。

「私も妻も旅行が好きで、コロナ禍前までは国内は2~3カ月に1回くらい、海外旅行も1~2年に1回は出かけていました。国内旅行は21年から少しずつ再開していましたが、海外はなかなか踏み切れなかった。5月以降は水際対策もなくなりますし、ようやく海外旅行に出られます。今から楽しみです」

 そして、外国人の訪日、いわゆるインバウンドも新型コロナの影響から抜け出しつつある。日本政府観光局の推計では、3月の訪日外国人数は181万7500人で19年比65%程度。コロナ禍前最大の訪日者数を誇っていた中国人客が19年比1割程度に留まり全体を押し下げているが、それ以外の国からはおおむね8割程度にまで回復した。シンガポールやベトナム、米国などからはコロナ禍前を上回る。鳥海さんは言う。

「5月以降、中国人客の戻りも顕著になってくる。今年は19年比8割程度まで戻し、来年は19年を超えるとみています。宿泊費の高騰やオーバーツーリズムなどの懸念があり、早めの予約などがより必要になってくるかもしれません」

 こと旅行に関しては、いよいよ本格的な「アフター・コロナ」が見えてきたようだ。(編集部・川口穣)

AERA 2023年5月15日号

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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