『人口亡国――移民で生まれ変わるニッポン』
朝日新書より発売中
人口減少の将来は?
日本各地で毎日のように、今年は過去最少になったと、人口減少のニュースが繰り返されている。地方選挙では地域の人口維持が焦点となり、政府も異次元の少子化対策に取り組むとしているが、残念ながらその努力が実を結ぶ可能性は限りなく低い。なぜならそもそも子どもを産む女性の数が若い世代ほど少なく、時間がたつほど自動的に子どもの数が減ってしまうからだ。国立社会保障・人口問題研究所の最新将来人口予測では、2070年までの人口見通しに前年より増える年は一度もない。
一方、人口減少は恐れる必要はないという声もある。ほぼ100年前、1920(大正9)年に初めて国勢調査が行われたが、この時の日本の人口は5596万人と現在の半数以下だった。狭い国土に人口が多すぎる、数十パーセント減るぐらいがちょうどよいと考える人たちもいる。
残念ながらそんな楽観論は許されないだろう。日本はいま世界一の高齢化率を維持しながら人口減少が加速する。高齢者で介護施設はあふれかえっても、そこで働く若者は減っていく。エッセンシャルワーカーと呼ばれる社会維持に直結する重要な仕事を含めて、あらゆる産業で働き手の数は減っている。さらに財政面でも危機が訪れる。日本はGDP世界三位とはいえ、世界最大の債務を抱えた国である。国民の数が減少を続ければ当然、GDPも減るだろう。そうなれば1200兆円を超える国の借金を返す当てが無くなってしまう。身ぎれいな国であれば問題ないが、大借金を抱えている以上は、少なくとも毎年、GDPを1%程度伸ばしていかなければ政府は破綻してしまう。
移民を巡るイメージ
では、その解決のために移民を受入れることはどうか? 日本では根強い反対論があるといわれる。一つには移民は犯罪者予備軍といった誤った認識があるからだ。移民には当然、高度人材も含まれるはずだが、なぜか日本では貧しい労働者、教育レベルの低い労働者としての片寄った姿しか認識されていないようだ。
先進国は例外なく移民を受入れているが、そこで定住する以上、年齢、教育レベル、就労経験、語学レベルを判定したうえで、自国に必要な人材を選別して受入れている。
一方、日本がとっている技能実習制度は、研修の名目で現場労働に外国人を受入れているが、その修了後は、定住が可能な在留資格、特定技能への移行が可能となっている。この制度では受入れ数の制限がなく、結果的に、日本語能力の低い外国人の定住化につながりつつある。