なぜ、変わるのが嫌なんでしょうか。それは「今の生活を変えたくないから」。たとえば、格差是正のために、高等教育の無償化を目指したとします。そこには財源が必要で、どこかで痛みが出ます。でも、その痛みは自分に降りかかってくるかもしれない。だから制度を変えたくない。

 官僚は優秀なので、消費税の税率を上げるのが大変なことはわかっています。代わりに、社会保険料を少しずつ上げていく。気がついたら、昔は年に2回行けていた旅行が1回になる。そうやって、みんなでだんだん貧しくなっているのが今の日本です。

 それでも、みんな等しく貧しくなっていくのなら、日本人は気にしないのではないでしょうか。外圧や戦争といったことが起きない限り、この国は変わらないのでしょう。

 では、子どもを援助している今の高齢者世代がいなくなるとどうなるのでしょうか。おそらく、その時に日本の本当の危機が訪れます。

週刊朝日  2023年3月31日号