書名を見ただけで「まったくだよなあ」と思った人も多いかも。この間の選挙もあんな結果になっちゃうし……。橋本治『バカになったか、日本人』は2011年3月の大震災から、14年12月のくだんの解散総選挙までを視野に入れたコラム集である。主なテーマは震災復興、原発、そして政治。必然的にそれはため息の集積とならざるをえない。
たとえば、なぜ私たちには投票したいと思える政党がないのか。
理由は単純。<戦後社会の日本人のあり方にふさわしい政党が今になってもまだ存在しない>からである。「改革」を叫ぶしか芸のない小泉純一郎や橋下徹や安倍晋三が支持されるのも同じ理由だ。<だって、日本にはロクな政党がない。官僚組織もなんだか知らないが、ドローンとしている。二つ合わせた「既成勢力」がどうしようもなくだめだということは、みんな知っている。そこに「改革」を叫ぶ新勢力が現れれば、大体勝てる>のだ。そもそも<日本人は抽象的な「政策」の方面ではあまり善し悪しの判断が出来なくて、「あいつはいい、あいつはだめだ」という個人レベルでの判断しか出来ないのかもしれない>。
こうしてしだいに明らかになるのは日本人と民主主義との情けない関係である。<「民主主義の結果、日本人はバカばっかりだ」という考え方が知らない間に一般化して、政治家が「私たちに任せておけばいいのです。あなたたちは、私たちを支持していればいいのです」と囁きかけるようになってしまった>
やれやれ。その通りだと思えば思うほど意気阻喪。<日本の社会には烏合の衆のような市民がいるばかりで、「機能的な政党組織」も「リーダー」もいない>この現実!
それでも、言うべきことは言えと橋本サン。<誰もが口を開くネット時代になったんだから、もう少し「言うべきことはなんだ?」と考えるべきなんじゃないだろうか>。これがバカから脱皮する第一歩。言論の数より質を問えってことだね。
※週刊朝日 2015年1月16日号