〈全国の迷えるオヤジ様、毎日明るい気分で生きてますか?〉〈そこの無口で無表情なオヤジ様! 今、どんな気分ですか?〉。そんな呼びかけではじまるコラムが「あ」から「ん」まで46本。瀧波ユカリ『オヤジかるた 女子から贈る、飴と鞭。』は「週刊文春」の人気コラムを集めた、中年男性に「正しいオヤジ道」を説くエッセイ集だ。
 特製かるたも付いてます。〈あ 明るい オヤジは いいオヤジ〉〈い イライラは わかりやすく お願いね〉〈う 後ろ姿に ご用心〉
 クラブホステスも派遣社員も経験した著者は男性の気持ちも女性の気持ちもわかっちゃう。かくて繰り出されるアドバイスは〈「女は愛嬌」と言われ育ってきた女子は、男性に明るく接するのにいいかげん疲れています。(略)あなたの明るさで、女子を喜ばせてあげてください。さすれば、必ずやあなたの周りには女子たちが群がり始めるでしょう〉。
 おーそうなのか。でも本当か?
 10年か20年前だったら、もっと楽しく読めたかもしれない。
〈この世で一番生命力の強そうな生物は何でしょう。(略)私は即座に「オヤジ」と答えます〉〈そう思うからこそ私達女子は、安心してオヤジ様に冷たくできます〉
 だよね。私も前はそう思ってたわ。だからオヤジやっつけ系の文章を書くのも読むのも好きだった。しかしこの頃、オヤジの生命力が落ちていると感じるのは私だけ? 〈地面に座り込んだギャルの、ずり下がったジーパンからお尻の割れ目がコンニチハしている後ろ姿を見るのが大好きな、そこのオヤジ様!〉や〈家にも帰らず運動もせず毎晩おいしいものばかり食べ歩いている、そこのオヤジ様!〉がウヨウヨいるとはどうも思えないのである。
 思い出したのはバブルの頃のオヤジ像。そんなオヤジは今いずこ。
 著者は1980年生まれの34歳。30代女子には今もオヤジがこう見える(お気をつけあそばせ)というメッセージとしては意味があるかも。

週刊朝日 2014年11月28日号