1937年、東京帝国大学教授であった矢内原忠雄が自身の言論活動を理由に、自ら職を辞したことにより知られる「矢内原事件」。本書はこの事件に光を当て直す試みだ。 従来、矢内原事件は戦前・戦中時の政治権力による言論抑圧の一環と説明されてきた。それに対し著者は「マイクロヒストリー」と呼ばれる手法を用い、出版社・文部省役人・東京帝国大学総長など事件に関わった様々な人々の視点から事件を再構成する。臨場感…

続きを読む