BlackBerry Passport(公式サイトより)
BlackBerry Passport(公式サイトより)

 ジャムなどでおなじみのブルーベリーという果実。これに似た名前の「BlackBerry(ブラックベリー)」というのをご存じだろうか? もちろん、ブルーベリーの仲間ではない。しかし、この名前を聞いて「携帯端末かも」と、ピンとくる人は果たしてどのくらいいるだろうか。

「BlackBerry」は、カナダの通信機器メーカー「ブラックベリー(旧称リサーチ・イン・モーション)」が1999年から販売する独自のOSを積んだスマートフォンシリーズだ。手のひらサイズの端末にパソコンと同様のQWERTY配列の物理キーボードを備え、パソコンライクな操作性を実現しているのが特徴である(一部端末除く)。アメリカなどを中心に、海外ではインターネットや電子メール端末として重宝され、00年代後半にはハリウッド映画にも多数登場するほどの人気を呼んでいた。また、セキュリティー性能の高さに定評があり、アメリカのオバマ大統領も使用していたといわれているのは有名な話である。

 しかし、2010年ごろになると、iPhoneやAndroidといった、タッチパネル式のスマートフォンが広く普及。これらの新進気鋭の端末と比べると、端末ラインナップと対応アプリの少なさ、物理キーボードを搭載するがゆえの画面の小ささなどから敬遠され、人気が急速に落ち込んでいったのである。これに危機感を持ったブラックベリー社は、物理キーボードを廃してタッチパネル式を採用したモデルやタブレットを投入したものの、大きな人気は得られなかった。その結果、次第に経営も悪化し、一時は身売りの危機に陥っていた。

 ちなみに、日本でもかつてNTTドコモを通じて一般消費者向けにも販売されていたが、あまり人気は得られなかったようだ。現在は、一般消費者向けの販売から撤退し、法人向けに絞って販売が続けられている。

 そんな状況にあるブラックベリーが9月に発売したのが、「BlackBerry Passport(ブラックベリー パスポート)」である。この端末の最大の特徴は、4.5インチの大画面で、画面が正方形になっていることだ。解像度もこれに合わせて1440ドット×1440ドットと、完全な正方形である。また、伝統の物理QWERTYキーボードを搭載している。2.2GHzクアッドコアのCPU、3GBのメインメモリー、1300万画素の背面カメラ、最大30時間駆動する3450mAhの大容量電池を搭載するなど、基本的な性能も高い。そして、最新OS「BlackBerry 10.3」を搭載し、音声認識機能「BlackBerry Assistant(ブラックベリー アシスタント)」にも対応する。なお、アメリカでの価格は通信契約なしで599ドル(約65300円)だ。

 正方形のディスプレーということで、棒グラフや円グラフなど縦にも横にも表示する際など、表計算ソフトで威力を発揮しそうだし、製品イメージとして、病院でレントゲン画像を患者に見せているというものもあり、いろいろと用途が広がりそうだ。

 もう後がないほどの危機的な状況にあるブラックベリー社は、この正方形ディスプレーを搭載した「BlackBerry Passport」で、巻き返すことができるのか今後の動向がきになるところだ。