今月7日、米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授・中村修二さん、名城大終身教授・赤崎勇さん、名古屋大教授・天野浩さんの3氏に、青色発光ダイオード(LED)の発明に対して、ノーベル物理学賞が贈られることが発表されました。赤崎さんと天野さんは、LEDの開発で、中村さんはLEDの実用製品化に成功したということで、3人同時での受賞です。
ところで、中村さんといえば、2004年の「200億円判決」を覚えてらっしゃる方も多いのではないでしょうか。青色LED製法特許の対価として200億円を求め、勤務していた蛍光材料メーカー「日亜化学工業」を訴えた裁判です。2005年には東京高裁で、日亜化学工業側が8億4391万円を支払うことで和解に終わったものの、研究者が「発明の対価」を求めて企業を訴えた裁判としてメディアでも大きく取り上げられました。
LEDについての一連の騒動をめぐっては、これまでにも『真相・中村裁判』(日経BP社刊) や『負けてたまるか! 青色発光ダイオード開発者の言い分』(朝日新聞社)などの書籍も多数出版している中村さん。一連の著書では一貫して"日本の研究者・技術者の待遇が非常に悪い。いくらすごい新発明をしても利益を得るのは会社だけで、研究者本人への報酬が少なすぎる。正当な報酬が得られなければ、優秀な研究者が育たない"と主張してきました。
事実、20年間のサラリーマン研究者時代、海外の同業者から"スレイブ(奴隷)中村"とあだ名をつけられるほど会社に尽くしていたにもかかわらず、LEDを開発した際に、日亜化学工業会社からは支払われたのはわずか2万円の報賞金だけだったのです。
本書『大好きなことを「仕事」にしよう』でも、当時を振り返り、"日本の将来を担う若い後進に「自分の好きな理系へ進んで画期的な発明をすれば大金を手にできる」「好きなことをやって自由に生きていける」ということを、この裁判を通じて伝えたかった"と述べています。
中村さんは、本書の最終章で「発明と発明者を大切にしない社会は、商工業の分野で大きな発展を見こめません」と訴えています。国家戦略として「知的財産立国」を掲げながらも、中村さんのような優秀な人材が、海外に流出してしまうのが現状。中村さんは、日本の会社社会に見切りをつけて、自身の研究拠点も米国に移し、米国籍も取得しています。今回の中村さんのノーベル賞受賞、日本人として手放しで喜んで良いものなのか、今一度、考えておかなければいけないのかもしれません。