ゴリラやチンパンジーなどの類人猿やほかのサルたちと人間は同じ霊長類だが、社会のありようはそれぞれ異なっている。ところがいま、人間社会はサルの社会そっくりに変わりつつあるという。人間の社会とは、人間らしさとは何なのか。霊長類研究の第一人者がゴリラの社会を通して、人類の秘密を探る。
荒くれ者、と思われがちなゴリラだが、実は人間よりずっと平和主義者だ。メンバーは平等で勝ち負けの概念がない。目をじっと見ることで争いを避け、相手の気持ちを読むことにも長けている。これに対し、サルの社会は力の優劣で上下が決まるピラミッド型で、互いに気持ちを通じ合わせることはない。
特筆すべきはゴリラが食べ物を分け合い、皆一緒に食べること。社会基盤が家族なのだ。サルは分け合わず一匹で食べる。家族に縛られず、自分の欲求が最優先。現代社会がまさしくサル型であることにギョッとする。
自然界ではどっちが悪いわけでもないが、「ゴリラっていいやつだなあ」と共感する私たちは本質的にゴリラ型だろう。彼らに学ぶことはたぶんたくさんあるのだ。
※週刊朝日 2014年10月10日号