『THE ROLLING STONES ROCK AND ROLL CIRCUS』VARIOUS ARTISTS [CD]
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『THE ROLLING STONES ROCK AND ROLL CIRCUS』VARIOUS ARTISTS [DVD]
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 1968年11月26日、ロイヤル・アルバート・ホールで行なわれた2回のコンサートでクリームはその活動に終止符を打っている(翌年2月に発売される最終アルバムの録音もすでに終えていた)。強い刺激を受けたザ・バンドの《ザ・ウェイト》で歌われているように、「重荷を下ろし、自由になった」エリック・クラプトンは、一方で、それなりの達成感と充実感も覚えたという。

 だが、次のステップはまだはっきりとはみえていない。しばらくは、誘われることがあればなんでもトライしてみようと思っていた彼のもとに、おそらくそういう事情もよく知っていたはずのミック・ジャガーから電話がかかってきた。「BBCでの放送を前提にしたスペシャル・プログラムの収録に参加してほしい」。テーマは、ロックンロールとサーカス。

 ローリング・ストーンズは『ベガーズ・バンケット』を完成させたばかりであり、そのイメージとも重なる企画だったのかもしれない。監督は、ビートルズや初期ストーンズの映像をいくつか手がけていたマイケル・リンゼイ=ホッグ。収録は12月11日、ウェンブリーの撮影スタジオで行なわれる。断る理由はなかった。出演予定者のなかにタージ・マハール(ギターはジェシ・エド・デイヴィス)の名前があったことにも惹かれて、彼はその申し出を受け入れた。

 このプロジェクトにクラプトンは、ザ・ダーティ・マックのギタリストとして参加している。ヴォーカルとギターがジョン・レノン、ベースはキース・リチャーズ、ドラムスはジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのミッチ・ミッチェル。なんとも豪華な顔ぶれの、一夜かぎりのスーパー・グループだ。不思議なバンド名は、ジョンが決めたものだという。

 サーカスを模した非現実的な空間で彼らが聞かせたのは《ヤー・ブルース》と、ヨーコとヴァイオリン奏者イヴリー・ギトリスをフロントに立てた《ホール・ロッタ・ヨーコ》。『ザ・ビートルズ』からの選曲ということになる前者は、基本的にオリジナル版を踏襲した演奏となっているが、中間部のソロでクラプトンは、強烈な存在感を示している(ギターはクリーム解散公演でも使われたギブソンES-335)。《ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス》同様、これもまた、次の一歩に向けたいい刺激となったはずだ。

『ロックンロール・サーカス』には、ほかに、ジェスロ・タル、ザ・フー、マリアンヌ・フェイスフルらが参加。ストーンズは《ジャンピング・ジャック・フラッシュ》、《ソルト・オブ・ジ・アース》など6曲を演奏しているが、その出来に満足できなかったことなどが原因で、企画そのものはお蔵入りとなっている。映像版、アルバムともに、正式な形でリリースされたのは、1996年。収録から28年後のことだった。[次回9/3(水)更新予定]

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