もちろん、ここで説明する言葉だけでは「凄み」が伝わらないかもしれない。だが、実際に自分で試すと、ほんの数秒でいくつもの切り口が生成され、提案される体験はかつてなかったものであるのがわかる。四半世紀前にグーグルが世界を変えた「検索」とは似て非なるもの。ざっくり言えば、一つの言葉から数多の検索結果を提示するのではなく、数多ある情報から解を導き、作り出す技術。集合知のテクノロジーとして、大幅な進化を遂げたのだ。
厚生労働省が2月に公表した調査では、ついに国内の出生数が80万人を切った(22年速報値)。少子高齢化が加速し、労働人口も減少の一途を辿っている。さらなる業務効率化が求められるなか、GPTやそこから派生する技術は、その一翼を担う。(編集部・福井しほ)
「GPTがいいかげんなことを言う」背景
ChatGPTの技術を「100年に一度の産業革命」と語るnoteの深津貴之さんは、現状をどのように捉えているのか。ここからは、深津さんへのインタビューをお届けする。
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「ChatGPTはうそをつく」とよく言われますが、うそをつかせる使い手に問題があると僕は考えています。
たとえば、車も初期段階はツールを持っているかどうかが、中期以降はドライビングテクニックがあるかどうかで勝負が決まる。それと同じで、GPTが普及すれば、「使うスキル」が問われるようになります。そのためには、理屈を理解することが大事です。
ひと言でいうと、GPTとは、「確率上それっぽいことを喋るAI」のこと。渡された文章に対して、一番もっともらしい続きを書いていく機械です。「いたいのいたいの」と入力すれば、「とんでけ」と返してくる。一方で、存在しない架空の国の大統領を聞くと、そういう大統領がいるという前提で、確率上最もありえそうな返事を書いてくる。これが「GPTがいいかげんなことを言う」背景です。
ここまで理解すると、僕らがGPTにやるべきは質問ではないということがわかります。自分がほしい情報を書いてもらうには、何を入力すればいいかというのがGPTの本質なわけです。イメージ的には、早とちりするアルバイトの子にいかに指示するかというのに近いかもしれません。
知性と呼ばれるものを人はお金で買えるようになってしまった。月3千円払えば超人になれる、みたいな。好きとか嫌いとか、賛成とか反対とかに関係なく、全人類がGPTを含めた生成系AIの流れに巻き込まれていく。誰もここから降りることができないと考えるならば、最初に遊んでおくのが一番楽しいし、学びと利益を得られる。食わず嫌いをする理由はありません。
(構成/編集部・福井しほ)
※AERA 2023年3月20日号より抜粋