noteのアシスタント機能に「カレー嫌いの人にカレーの魅力を伝えたい」と入力。すると、わずか十数秒で、「スパイスとは何かを解説し、カレーに興味を持ってもらう」といった実直なものから、「カレーアイスクリームのレシピを紹介する」「インド式カレーヨガを紹介し、カレーと健康の関係をアピール」などマニアックなものまで五つの切り口が提案された。
同社が使うGPT-3は、ChatGPTの前身にあたる言語モデルの一つで、2020年にリリースされた。定型的な受け答えを超えた“使えるAI”の出現に一部界隈で盛り上がりを見せたものの、高額ゆえに個人では手を出しづらかった。
それが、ChatGPTの登場により潮目が変わった。昨年11月に発表されてから、わずか2カ月で利用者数は1億人を突破。同じユーザー数を獲得するためにインスタグラムが30カ月、TikTokが9カ月かかったことからも、その勢いが感じ取れる。
深津さんも、すこぶる熱い。
「ものすごいお祭り騒ぎが始まったと感じています。活版印刷や蒸気機関車のように、全人類に普及するインフラ的なテクノロジーですね」
仕事の効率が「10倍」に
今やGPTなしでは仕事ができなくなったと話す深津さん。プログラマーとして10言語ほどを扱うため、細かい言語の差が時々わからなくなる。かつてはグーグル検索でその都度確認していたが、今はGPTをフル活用。仕事の効率は、「体感で10倍は上がった」と感じている。
テクノロジーによる効率化をめぐっては、今から10年前に衝撃的な論文が発表されている。
英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授(当時)らが13年9月に発表した論文「雇用の未来」では、10年から20年後には47%の仕事がAIに取って代わられるリスクが高いと結論づけた。
あれから10年──。実際に「なくなった」といえる仕事はほとんどない。が、ChatGPTを活用すれば、複雑だったり、人の手を必要とする仕事の一部を「なくす」または「減らす」ことはできる。深津さんは言う。
「会計士や弁護士といった教育やトレーニングに時間とお金がかかる知的産業ほど、気をつける必要があると思います」
過去の判例を調べたり、文書作成したりする業務はいらなくなる。他にも、ライターやクリエイター、教員などがAIを取り入れれば、「人にしかできない」仕事に集中できるという。