元号が変わり4半世紀を過ぎた今、若手社会学者が「平成」という時代についてまとめた現代社会論だ。一見、「平成」という時代を一括りに論じるかのようなタイトルだ。しかし、本書は「平成」とは、いるのかいないのかわからない「ユーレイのような性格」を持つという拍子抜けする宣言から始まる。
 説明材料も経済、文学、ニュース、批評──と多様。共通するのは平成という時代下、各領域を特徴づけるため多くの論評がなされてきたにもかかわらず、いずれも決定的な説明にはなりえていないということ。その一例として、著者が働いていたドワンゴのニコニコ動画がある。アニメから政治、素人からプロまでジャンルも作り手も多種多様なコンテンツが並ぶ世界。何もかもがあるようで、けれども決してひとつの言葉に還元できない。それこそが「平成的」なのだという。
 自身のメディア経験談なども織り込まれ、身近な地点から同時代への想像力が刺激される。煙に巻くような文体だが、本書の意義は「問い続ける営み」の快楽にあるという。モヤモヤした感覚を楽しみたい。

週刊朝日 2014年7月25日号

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