<朝ハンバーグ昼ハンバーグ昼花火>
この俳句の作者は相当ハンバーグが好きらしい。しかし昼花火である。一体どういうことだろう。そこで読者は想像を広げる。ずっとハンバーグで頭が一杯だったところにドーンと花火が打ち込まれ、衝撃を受けたのではないか。あるいは、朝も昼も大好きなハンバーグにしてしまえ、昼から花火をしてしまえ、と夏休みに羽目を外しているのではないか。
本書は、芥川賞作家長嶋有氏の第一句集である。付属の「しおり」には、俳人だけでなく様々な人による「私はこう読んだ」が紹介されている。俳句の受け取り方は一つではない。こういう見方もあるのか、と驚き、楽しむことができる。また、本書後半の「連作集」では、月に行った作者が<名月や寝転んだのはあの辺り>と回想するなど、自由奔放に俳句の世界を駆け回る。その世界観を追っていくのも面白い。
装幀は2014年講談社出版文化賞ブックデザイン賞を受賞した名久井直子氏が手掛けた。本文はすべて活版印刷。ぜひ手にとって眺めてほしい。
※週刊朝日 2014年7月4日号