本の内容とは関係ないのだが、この本は軽い。重量が軽いのである。持った時にハッとなる。これは本を読む者にとってはたいへんありがたいことですので、他の本も追随してくれることを望みます。
 さて本書は、現在のグルメブームについて一石を投じようとしたものだ。著者の友里さんは覆面作家で、有名と言われてチヤホヤされて一見さんお断りだったり予約が取れないというような飲食店に食べにいき、食べたものがまずかったり、不当に高かったり、常連客ばかり優遇してるのが丸わかりだったりする店の実名を挙げ、批判をする人である。ウェブサイトでそういうことをガンガン書いている。私はそれをよく読んでいた。共感できたのは、そういうカンチガイ有名店も悪いが、そういう店をホメて常連となりタダメシ食ったりしてるフードライターやグルメブロガーも同罪であると言ってることで、「その通り!」と叫びたい。
 なのでこの人が本を出す、と聞いた時には期待もしたんだが……何かダメなんですよね。内容は一貫している。ウェブじゃなくて書籍だからか、店名が匿名になっている。でも、そこが問題じゃない気がする。いろいろと、カンチガイ店の傲慢シェフが威圧してきたり脅迫してきたり、といったことが細かく書いてあるんですが。
「飲食店の真実」と銘打って料理人による匿名座談会もある。「身なりや職業で客を区別することはありますよね?」「ランチ客と夜の客、区別しますか?」などの質問に、各料理人がたぶんホンネをしゃべっていて、へー、と思うことも知らされたりするんですが。……なぜか面白くない、読み物として。
 田中康夫も似たようなスタンスで食べ物屋を批判してたけど、あっちは粘着質で実に面白かった。いや、こちらも粘っこいことは粘っこいんだけど。言ってることはもっともで、イヤな食べ物屋もほんとに感じ悪そうなので、次の本ではどんどん読みたくなる文章でお願いしたい。

週刊朝日 2014年4月18日号