妻が死亡したのは救急搬送された診療所で誤診を受けたからだとして、夫が診療所に対して訴訟したという報道がありました。



 ニュースで時おり報じられるこのような医療ミスの実態を知ると、「果たしてこの医者は本当に大丈夫なのだろうか?」と、医者に会う前から不信感を抱いてしまう人も少なくはないかもしれません。



 しかし、パーソナル医療コーディネーターのおのころ心平氏は、著書『誰も教えてくれなかった医者のかかり方完全マニュアル』の中で、「患者からの圧力が医療事故を引き起こすことも少なくない」と指摘します。



 パーソナル医療コーディネーターとは、医者にかかろうとしたり、既にかかっている患者の相談に乗る仕事。これまで19年間で、約2万2千件のカウンセリングを行ってきた実績のあるおのころ氏は、「医者なんだから、患者の命を救って当たり前」というような風潮や、モンスターペイシェントと呼ばれる自己主張の強すぎる患者の態度が医師を追い詰めていると説明します。



 さらに、医者不足で労働環境は過酷だとも言われています。そんな極限状態にいる医師の医療ミスを防ぐには、どうすればよいのでしょうか?



 おのころ氏は、まずは患者側が医師の抱えている事情を知ることが大切だと言います。「今、病院という場そのものが疲れています。過重労働の医者や看護師にこれ以上の負担を与えてもどうにもなりません。そんな疲れた空気を、なるべく明るく、風通しのよいものに変えられるのは、いまや医療現場の構成員の一人である『患者の力』ではないか」(おのころ氏)



 医療を批判するばかりでは、患者にとってよい医療は実現できません。医師が本来の力を発揮するために、患者の力が必要なのです。