「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害のある子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出合った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。
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卒業シーズンになりました。
我が家の息子も今月半ばに中学校を卒業します。息子が通う学校は一貫校で、中学生と高校生の違いは制服のネクタイの色が変わるだけなので、本人には「進学」という意識はあまりないようですが、親としてはやはり感慨深いものがあります。
中学1年生の教室は3階だったため、足が不自由な息子はエレベーターの使用を認めてもらえたものの、意地でも使わなかった頃から今月まではあっという間でした。
今回は我が家の子どもたちの中学生活をふり返ってみようと思います。
親友くんの存在が大きかった
昨年度は、双子の娘たちが中学を卒業しました。
医療的ケア児の長女は特別支援学校、健常の次女は息子と同じ一貫校に通っているため、卒業式の日程も内容も全く違いました。小さな頃は年子の姉弟は3つ子のように育っていましたが、中学に入ると、子どもたちの個性や好みや生活スタイルがはっきりと分かれ始めました。
それぞれが思春期となり、コミュニケーションが取りにくくなり、苦労した時期もありました。特に息子は、自分と友人たちとの身体能力の差を理解し、「努力だけではどうにもならない」と、少しずつ自分の身体の不自由さを受け入れ始めたように見えました。さまざまな葛藤を抱え、家族に当たることはあっても、外では良い意味で開き直ることができるようになっていった大切な時期だったと思います。
この変化には周りの方々の大きな支えがあったのだと思います。中2の個人面談では、担任の先生から、友人たちが荷物を持ってくれたり、行動に後れをとった息子に優しい言葉をかけたりするお子さんがとても多いと聞きました。思春期男子には母親の言葉は何も響きませんが、親友くんの存在は非常に大きかったようです。
ある時、体育の先生に「これはどう?(できそう?)と聞くと、死にます(笑)と、できないことをちゃんと教えてくれるので、接しやすいです」と言われ、私が知らないところではそんな風に冗談まじりで伝えていると分かり、安心したこともありました。