ネット選挙が解禁された昨年7月の参院選。候補者はソーシャルメディアを選挙運動に採り入れたが、これまでの選挙との違いはよく見えなかった。所詮インターネットは日本の政治では小さな存在なのだろうか? この疑問に答えようと、情報社会論や公共政策学が専門の著者が今後の「情報と政治の関係性」を俯瞰する。
 ネット選挙の意義は政党や政治家が日頃からネットを意識し、情報発信せざるを得なくなったことだという。すると市民が彼らの発言を検証できるようになり、「政治の透明化」が進む。他方で政党がネット上の言説を分析してPRに使う「政治マーケティング」も高度化する。しかし、ネットの「双方向性」を生かした政策論争は広がらない。これは、日本の政治習慣に問題があるからだと指摘し、IT技術を使って政治の情報化をめざす「オープンガバメント」の拡大に期待をかける。
 詳細な分析より全体像を描くことを優先した結果、わかりやすくまとまっている。政治の変化を見通すために今読みたい本だ。

週刊朝日 2014年1月31日号

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