日本の書店はこの15年で約8千軒が消えていった(日本著者販促センター調べ)。一方で、一店舗あたりの売り場面積は増加傾向にあり、インターネット通販も広く普及した。本を売る現場が激変する中、現役書店員6人の言葉に耳を傾けた結晶が本書だ。
「書店員の私は本を買って読む人にとっては、名前のない、顔も認識されない存在でしょう。でも、関われるのって幸福だな、と。そういう出会いの『もと』みたいになれたらいい」「ほんとうに好きじゃなければやめたほうがいいよ、と年下の人間にいわざるをえない業界にはなっていますよね」「人と人とが接する。私は、今後も本屋として店を構えて商売する以上は、どういう品揃えをするという以前の、ちゃんと人と接することができるというところがポイントになっていくと考えています」
 本書には、棚の工夫一つで本への反応が一変する、といった書店の裏側を垣間見る面白さはある。しかしそれ以上に、彼らの肉声から伝わる、仕事への真摯な思いや迷いに静かな共感を覚える。そこには、大切にしたくなる“善さ”が確かに存在している。

週刊朝日 2014年1月24日号

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