「愛のむきだし」「冷たい熱帯魚」「希望の国」など、数々の衝撃的な作品を手がけた映画監督が説く人生論。厳格な父から逃れて上京。路上で知り合った女に「セックスして心中するか、実家に行って一緒に住んでくれるか」と迫られたり、新興宗教の教会に住み込んだり、一回だけ関係を持った女の子がヤクザの娘で、「レイプしてただで済むと思うな」と因縁を付けられて事務所に監禁されたりと、映画のような修羅場をくぐり抜けてきた。
 そんな著者が、自らが刺激を受けた数々の名画と共に語る人生論が面白くないわけがない!
 「逃げるなら早いうちに逃げ去れ」「ピンチを逆手に取れ」「ヤリたければ知性を磨け」などといった激しい言葉は破天荒に見えるが、どれも真実味が宿る。中でも印象的なのは、「自分が一番長く付き合うのは自分という他人であり、友人や恋人とはケンカ別れできても、自分とは絶縁できない」ということ。
 もうひとりの自分と本音で向き合い、けもの道を笑いながら歩く姿はまさに“映画のような人生”であり、それこそが生きる醍醐味なのだろう。

週刊朝日 2014年1月17日号