タイトルからは授業中に教室を走り回ったり、暴れ回ったりする小学生を想像するかもしれない。本書にもモンスター化する小学生は登場するが、著者の批判のまなざしは、児童の振る舞いや育ちではなく学校制度に向けられる。
現在の教育制度は明治時代に欧米へのキャッチアップを目的に作られたことは広く知られる。効率性や協調性を育むことが重視され、詰め込み式の学習形式が徹底されたが、経済水準で欧米に追いついた今でも富国強兵の影を引きずる授業が行われている。順応しない児童は「落ち着きがない」「親のしつけが悪い」と声高に非難されるが、時代と制度の乖離を考えれば授業に馴染めない児童の方がむしろ自然だと著者は投げかける。
世間では創造性を重視する教育の機運が高まるが、教育現場は海外と比べてクラスあたりの児童数が多く、足並みを乱す変わった児童は歓迎されないままだ。環境が激変しながらも思考停止に陥り、現状を疑わない大人たちこそが「本当に怖い」存在であることを痛感させられる。
※週刊朝日 2013年11月22日号