伊藤:うん。
井口:作品に対して自分が丸ごと関わっていきたい。そうじゃなかったら、今回だって10年かけてちひろさんが書いた小説を台無しにしちゃっていたと思うから。
伊藤:準備にも相当時間をかけたし、編集スタジオで仕上げをする時もちょくちょく来てくれたもんね。私が編集で悩んでいる時は相談に乗ってくれたりもした。本当に一緒に作れたっていう感じがする。
井口:そのほうが楽しいよね。
伊藤:うん。そう思う。
井口:あと何本ぐらい撮る?
伊藤:今のところ、気持ちが尽きるまでは撮るつもり。
井口:気持ちが尽きるまで?
伊藤:役者になるとか言い始めるまで。
井口:ははは! もうすぐ公開になるけど、見てくれた人が一体どんな反応をするのか、怖くもあり、楽しみでもある。
伊藤:この映画を見た後に、「この映画について人と話がしてみたい」と思ってもらえるのが、私は今回の作品にとってうれしいことだと思ってるんだ。
井口:うん。共感とかではなくて、残したいよね。感情の片隅に。
〇いとう・ちひろ/神奈川県出身。2003年、「Seventh Anniversary」で脚本家デビュー。以後、行定勲監督とタッグを組み、「世界の中心で、愛をさけぶ」(04年、共同脚本)、「今度は愛妻家」(10年)、「つやのよる」(13年)などの映画脚本を担当。井口理初主演映画「ひとりぼっちじゃない」(3月10日公開)で監督デビュー
◯いぐち・さとる/1993年、長野県伊那市生まれ。2017年、4人組バンドKing Gnuを結成、ボーカルとキーボードを担当。19年、アルバム「Sympa」でメジャーデビュー。音楽活動のみならず、俳優としてドラマや映画にも出演している
(編集部・藤井直樹)
※AERA 2023年3月13日号より抜粋
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