井口理さんと伊藤ちひろさん(撮影/山本倫子)

井口:よかった、ギャップがあって。

伊藤:うん。ドームとかで歌っているところからのギャップは相当なものだよ。ススメを演じている井口君を見たら、見ちゃいけないものを見てる感じがすると思う。

井口:ははは!

伊藤:人前で歌う時の井口君と、日常を生きている井口君って違うよね。仕事の時は自分の中のスイッチをバチンと入れる感じ?

井口:うん。ちひろさんがうらやましいけどね。スイッチとかないじゃん。

伊藤:いや、私もあるよ。

井口:え、そうなの?

伊藤:基本的にずっと嘘をついています、私は。

井口:怖い発言だな~(笑)。

伊藤:本当に心を許せる人ってめちゃくちゃ少ないし、自分を見せられない。

井口:じつは薄皮をかぶっているんだね。

伊藤:たぶんもっとぶ厚いやつをかぶっています(笑)。そういうのも含めて、これから変えていければいいなと思ってる。監督がむき出しでいるほうが、周りも仕事がしやすいと思うから。

井口:「ひとりぼっちじゃない」の撮影初日に行定さんとバチバチになってるところを見てたから、むき出しなんだろうなと思っていたんだけど。

伊藤:あれはまあ、ちょっと……「うるさいな」と思って……。

井口:ははは! 行定さんは今回の映画のプロデューサーでもあるけど、元々ちひろさんに脚本を書くように勧めてくれた人なんだよね?

伊藤:うん。ちょうど20年くらい前だけど、当時私はフリーで映画の小道具をやっていて、行定さんが監督のドラマを担当することになって。私、「贅沢な骨」(01年)っていう行定さんの映画がすごく好きなんだけど、あの映画を見ながら、自分が思った通りの展開になっていく気持ちよさみたいなものを初めて味わったの。

井口:へえ~。

伊藤:私は元々小説家になりたいなと思っていたんだけど、小説を書くのって簡単じゃないし、映画も好きだったから、生活のために映画業界に入った。小説家になる夢は一旦あきらめて、自費出版でもいいからいつか出せたらいいなと。そういう話を撮影の合間に行定さんにしたら、「え、読みたい。何かないの?」って。

井口:ふふふ。

伊藤:それで「短編ならあります」って読んでもらったら「すごいいいじゃん。脚本は書いてみないの?」って言われて、その気になってしまった(笑)。

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