「ブス、地味、存在感がない、誰からも注目されない、自分の言いたいことをはっきりと言えない、人の目が気になる、女が怖い、男がわからない、モテない、イケてない」。これだけのコンプレックスを抱える著者が綴った、自伝的エッセイ。
 学生時代から演劇に没頭していたため就職はせず、やがて生活費を稼ぐだけのバイトに飽きてAV制作の世界へ。エロの世界で働きながら、自分らしさを取り戻してゆく過程は、笑えたり、はっとさせられたりの連続。エロの世界では「コンプレックスが強みになる」という。貧乳の女優は幼女のように見えるから喜ばれるし、存在感のないカメラマンは、素人モノを撮影する時に相手を警戒させないから好都合。短所が長所に反転する瞬間の喜びは、コンプレックスだらけだった女の子を少しずつ、しかし確実に強くしていく。
 やがて著者は、エロの世界を演劇に仕立てることで「“女”の生態という普遍的なものを描けるのではないか」と思うように……入り口はエロだがその奥に広い広い「女の世界」が開けている。

週刊朝日 2013年10月18日号