キヤノンEOS-1N RSに15ミリF2.8フィッシュアイの使用が多く、ほかに180ミリF3.5マクロ。ストロボは15ミリに連動できるオリンパス製に光量を抑えるため乳白色のアクリルを2枚付けている。タッパーウエアの底を切り抜いた自作だ。ストロボコードはニコンF-801Sを使っていたときの名残でニコン製。奥地での撮影もカメラ1台だが、バッグにはモータードライブやストロボ用に電池が20本、それにフィルムが15本と相当な重量になる
キヤノンEOS-1N RSに15ミリF2.8フィッシュアイの使用が多く、ほかに180ミリF3.5マクロ。ストロボは15ミリに連動できるオリンパス製に光量を抑えるため乳白色のアクリルを2枚付けている。タッパーウエアの底を切り抜いた自作だ。ストロボコードはニコンF-801Sを使っていたときの名残でニコン製。奥地での撮影もカメラ1台だが、バッグにはモータードライブやストロボ用に電池が20本、それにフィルムが15本と相当な重量になる
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長野県南佐久郡で日本の国蝶オオムラサキが、樹液を吸っているカブトムシを見て舞っているところを撮影。世界各地で年間約6000枚蝶を撮って、気に入るのは20枚くらいしかないというから自分で掲げるハードルは高い
長野県南佐久郡で日本の国蝶オオムラサキが、樹液を吸っているカブトムシを見て舞っているところを撮影。世界各地で年間約6000枚蝶を撮って、気に入るのは20枚くらいしかないというから自分で掲げるハードルは高い
2002年5月、地中海・コルシカ島。コルシカキアゲハは、蝶ではワシントン条約Ⅰ類に分類される4種類の一つで貴重な保護種。青空と地中海をバックにハマユウに飛んで来たところをとらえた。村田さんによると世界で初めてのフィッシュアイレンズによる写真ということで会心のショットだ
2002年5月、地中海・コルシカ島。コルシカキアゲハは、蝶ではワシントン条約Ⅰ類に分類される4種類の一つで貴重な保護種。青空と地中海をバックにハマユウに飛んで来たところをとらえた。村田さんによると世界で初めてのフィッシュアイレンズによる写真ということで会心のショットだ

――最初のカメラは。

 機種は覚えていませんが、6×6の二眼レフ。小学校3年、9歳のとき、父が買ってくれました。最初は何でも写して、夏休みには旅行記をアルバムにしたり、年賀状を写真でつくったりしていた。蝶に興味を持ったのは、カメラと同じ9歳。当時の子供は夏休みには必ず昆虫採集し、ぼくもクワガタからセミ、トンボとすべての昆虫を採っていました。あるとき、カラスアゲハが白いクサギの花にとまって羽ばたいているのを、川の対岸から網を伸ばしてギリギリ採ることができたんです。あまりの美しさに非常に興奮して、蝶がこんなにきれいならバッタとかトンボはやめようと。それが長続きしています。

 だけど、そのころはフィルムが期待通りの色が出にくいから蝶は写したくないと思っていたんです。それが1981年、弟が撮った、青空をバックにソバの花にとまったヒメアカタテハの写真を見て、「おまえが撮れるなら、ぼくも撮れる」と始めた(笑)。たぶんミノルタSRです。

 それから海野和男さんと親しくなり、いろいろ教えてもらいました。最初は自分で撮った蝶でカレンダーをつくりたいと思い、12枚くらいたまったので、家内に「カレンダーをつくりたいと思っている」と言ったら、「そんなゴミ箱に捨てられるものつくってもしょうがない」と(笑)。そして「本にしたら残っていいんじゃない」と言われて納得したけど、そうなるともっと写真が要る。それでプロを手本に熱心にやりだしたんです。カメラはニコンF-801Sやペンタックス645を経て、96年、2冊目の写真集(『チョウのいる風景』)を出したときに知り合いから、出たばかりのキヤノンEOS-1N RSをすすめられて切り替えた。理由は二つあって、一つは1秒間に250分の1秒以上で切ったら10コマ、それ以下なら8コマ撮れることです。もう一つはハーフミラー。ストロボがたけているかなど、撮影しながらファインダーから見られること。

――ふつう蝶の撮影でストロボはたきませんが。

 蝶は飛んでいる姿がいちばん美しいが、撮影がむずかしい。デーライトでシャッター速度125分の1秒で翅(はね)が止まって写るのは、自然光だけでは不十分。翅の裏も黒くツブれないのでストロボを多用するようになりました。手持ちで被写体との距離を調節するんです。

――ということは片手で。

 もちろん(笑)。右手はカメラ、左手にストロボ。125分の1秒だったら大丈夫、ブレません。蝶との距離を30センチとか40センチとか決めておいて自分が動くんです。感覚的に覚えている。舞って来たら、カメラでフォーカスは合わせられないですからね。天気がよければ、1日にフィルムを10本から15本は使います。ある人に言われたのは、「とにかく自分が撮りたい対象に出合ったら、飛んでいっていなくなるまで撮り続けろ」。以来、ケチらずにフィルムを使うようになった。いつも何枚残っているか気にしながら写してるんです。デジカメだとロスなく撮れるんですけどね。シャッターチャンスにフィルムを入れ替えるときがあって、目の前にいるのに悔しくて。入れ替えたらいなくなっていました。(笑)

――15ミリフィッシュアイを使うのも特徴ですね。

 環境を写し込んで、この自然を残せば、この蝶は残るんだということを訴えたい。魚眼なら被写界深度が深いので写るということです。昔はもっと蝶がたくさんいたのに、環境が悪くなっていなくなった。また温暖化で南方にいた蝶がこんなところにということもあります。蝶が飛んでいる写真は迫力があり、訴えかける力があるんです。

※このインタビューは「アサヒカメラ 2007年12月号」に掲載されたものです

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