近刊書の中から編集部が「旅編」と「冒険編」に分けて、おすすめの本を選んでみた。
 「旅編」では、旅をめぐるエッセーや旅行記を紹介する。エッセーでは、旅好きの直木賞作家・角田光代の『世界中で迷子になって』(小学館)が面白い。ニューヨークや香港、タイなどの街角での見聞が軽快につづられている。文学や芸術の香りが濃厚に漂う伊集院静の『旅だから出逢えた言葉』(小学館)もいい。ヘミングウェイやレオナルド・ダ・ヴィンチら著名人の言葉や、旅先で出会った人々の一言から旅想が広がる。
 写真と短い文章が並ぶ沢木耕太郎のフォトエッセー『旅の窓』(幻冬舎)は、旅の思い出を鮮やかに切り取っている。著者の心情が投影された写真を見ていると、すぐにでも旅に出てみたくなる。
 長期休暇がなかなか取れない人には、短期の海外個人旅行をすすめる吉田友和の『3日もあれば海外旅行』(光文社新書)が役立つ。航空券の買い方やホテルの選び方など実用的な情報が詰まっている。自転車で世界各地を回ってきた石田ゆうすけの最新作『地図を破って行ってやれ!』(幻冬舎)は、日本国内を回る旅で出会った人々や食への考察が楽しい。
 異色なところでは、1986年に起きた原発事故の跡地を回る『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β  vol.4-1』(ゲンロン)がある。ルポやインタビューのほか、人類の負の遺産を回る観光の意義を解説する。
 一人で海外旅行をすることの効用を説く『僕らが世界に出る理由』(石井光太、ちくまプリマー新書)もすすめたい。世界に飛び出して、学び、現実を直視することの大切さを訴えている。