日の丸に、とぼけた両目と口ひげのついた表紙。本の語り部は今年で67歳になる「ケンポーじいさん」だ。ボウリング・ボールのような赤い球体で写真に登場する。じいさんが日本国憲法だと一目瞭然の児童書だ。
 話し相手は、顔中を傷だらけにして泣きべそをかいている近所のイタズラ坊主。じいさんは彼を縁側に招き入れ、ひどい喧嘩をして死にそうになった自らの経験を語り始める。帯には、「なんだ、憲法ってこんなにステキなものだったんだ!」とある。写真集のような作りで、語りには咲き誇るソメイヨシノや日の丸弁当、黄金の稲穂と案山子(かかし)など、懐かしさと微笑ましさの入り混じるカットが添えられる。語りには英訳がつき、巻末には憲法全文が掲載されている。
 すべての人が幸せに暮らすには、和の心が大切、とあたりまえのことを繰り返して説くケンポーじいさんからすれば、争い事が絶えない私たちはいつまでも子供じみた存在なのか。著者はクリエーティブ・ユニットで、「キートス」と読む。フィンランド語で「ありがとう」の意味だ。

週刊朝日 2013年7月12日号

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