この世にAV(アダルトビデオ)が登場してから30年。年間売り上げが約550億円、出演する現役AV女優は推定1万人。それを陰で支えるAV男優はわずか70人という。
こんな書き出しから始まる本書。カメラの前でセックスするのがAV男優の仕事だ。いろんな女性とセックスができ、お金も稼げる。それは本当に夢のような仕事なのだろうか。
監督の意図を汲み、女優に気を配り、求められるタイミングで勃起し、長時間持続させるセックス・サイボーグ。本書に「AV男優たちが満足させるべき相手は女優以上に、自分以上に、視聴者である」とあるように、おいしい仕事とは到底思えない。そんな彼らが、AV男優になった経緯や仕事観などを率直に語る。
経験人数が推定5000人以上という彼らにとってセックスとは? 「生活の糧(笑)」「心を求めるつながり」「男女間でできる最大のコミュニケーション」「ホントは秘めごと」──。彼らは決してサイボーグではない。特殊な環境に身を置いたことで、常人が知り得ない何かを達観した、生身の男性たちだった。
週刊朝日 2013年4月26日号