国内外のポップカルチャーに魅せられたライター兼エディターのコラム集。彼は「ポップ・ウイルス」に感染した「ポップ中毒者」を名乗るほどこのジャンルにのめり込んでいる。
音楽、映画、文学、写真、演劇……ポップカルチャーのすべてを受け止め、全力で原稿に落とし込んでいく様子は、博覧強記そのもの。詳細かつ膨大な情報量は、読んでいて目眩がするほどだ。劇作家の宮沢章夫やラップグループのスチャダラパーなど、後に大化けする面々を無名時代から猛プッシュする目利きとしての顔も垣間見える。
本書は、ポップカルチャー界における流行り廃りを振り返るための貴重な資料である。と同時に、著者の熱狂と偏愛がこの国のポップカルチャーをどれだけ活性化させたか再確認するための書でもある。終盤で、占い師に「川勝さんはずーっと二足のわらじで、55でどちらか一足でいける」と言われたエピソードが出てくるのが、なんともいえず切ない。昨年一月、不慮の火災事故により55歳で急逝した彼は、ライターとエディター、どちらのわらじを選ぼうとしていたのだろうか。
週刊朝日 2013年3月15日号