集団に入ることやコミュニケーションが苦手、興味や考えに偏りがあるなど、発達障害の可能性のある生徒が全国の公立小中学校の通常学級で6.5%に上るという。
言葉が広まる割に発達障害の理解は進まず当事者向けの本は少ない。本書は青年期精神医学が専門の著者が、当事者に向けて、生活や人生が楽になるようにと願って書かれている。
特徴は二つ。一つは障害のとらえ方だ。発達障害と定型発達(普通の発達)は連続し、定型発達者にも発達障害の傾向があるという。一方で両者は異なる物の見方や考え方、つまり異なる文化ととらえることも大切と説く。連続性と異質性の二つの視点が必要なのだ。
もう一つは具体的な助言だ。実践的方法として、当事者には、一度に複数のことを頼まれたら紙に書き出して順番をつけることなどを提示し、周囲の人には、話す際に曖昧な質問を避ける、問いつめないなどの態度を勧める。
根底にあるのは、発達障害と定型発達は対等な文化であり、敬意を払うという姿勢だ。多様な文化を持つ人々が共存できる社会に。著者の視線はとことん優しい。
週刊朝日 2013年2月8日号