イタリアはミラノに住む人の9割はミラノが嫌いだ、と著者は言う。しかし残りの1割は、ミラノをこよなく愛しており、本書は、著者を含めそんな少数派がオススメする真のミラノ案内だというのだ。
 ドゥオモ大聖堂やサン・ロレンツォ・マッジョーレ聖堂など、定番の観光スポットも載っているが、ミラノを愛し、知り尽くしているがゆえの、マイナーなスポットの紹介が、やはり何より面白い。
 例えば「レンガ工場の住人と自由に語らい合う」と題された項目。ミラノ郊外の、アルベルト・クルティが経営するレンガ工場は5月の第3週の週末だけ工房を一般公開するが、その工房の職人との語らいを楽しもう、と本書は勧める。
 あるいは、大人は入場禁止の王宮庭園に、12歳以下の子ども同伴で入場しよう、という。実はその庭園は、むしろ大人を満足させるもので、子どもは不安になってしまうというのだ。
 著者独特の視線で語られるミラノは実に興味深い。読めば、いつの間にかこの町を好きになっているはずだ。

週刊朝日 2012年12月14日号

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