著者の菊池氏は北九州市立小倉中央小学校教諭。学級崩壊やいじめは、子どもの「自分に対する自信のなさ」「コミュニケーション力の乏しさ」が原因で、その結果、「クラス内の信頼関係が築けない」と分析する。
 菊池教諭はプラスの考え方や行動をうながす言葉をシャワーのように掛け続けることで、児童の聞く力・話す力・自主的な行動力を高めてきた。本書では6年生のクラスが一年間でどのように変化したか、その軌跡と奇跡を関原氏がルポの形でまとめている。
 特に素晴らしいのは、日替わりでクラスメートの長所やよいふるまいを見つけあい、帰りの会で発表する取り組み。観察力と判断力が育つという。ほめられた子どもは自信と安心感を得る。周りは真似しようとする。個々の成長が集団の信頼関係と思いやりにつながる。一方、「言葉の力がない人は友達のよさに気付かない。物事を表面的に好きか嫌いか、敵か味方かで振り分ける」と菊池教諭は指摘する。
 会社員や職員の研修にも、十分役立つ内容が多い。

週刊朝日 2012年12月7日号

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