「卑怯な日本軍」とは、米軍が兵士向けに作成した対日戦マニュアルだ。そこには日本陸軍が、日中戦で中国軍より血をもって学んだ、降伏するふりや死んだふり、不意打ち、偽装、地雷、仕掛け爆弾といった“弱者の戦法”が記されていた。マニュアルはまずこう始まる。「日本軍は卑怯な手を好む。戦争の歴史上、背信とずる賢さにおいて日本軍にかなう軍隊は存在しない」と。
 本書では特に多くのページを割いて、日本軍が使った即席地雷や種々の仕掛け爆弾が、写真と図版入りで紹介されている。例えば、ヤシの実爆弾、缶詰爆弾、歯磨きチューブ爆弾、石鹸爆弾、芸者ガールの写真を餌にしたブービー・トラップ等々。また、他の「戦略」として「サイパンで見つかった日本製の大量の酒は、『ブルゴーニュ』のラベルがついたメチルアルコールであった」とも。偽装の一例としては、硫黄島を“守備”していた火山灰で造られたダミー戦車の写真が紹介されている──著者は最後に、以上の「伝統と戦訓」を、現在の自衛隊は継承しているとも示唆している。

週刊朝日 2012年10月12日号