官公庁の未来予測とその結果について分析した人の話を聞いたことがある。無残なものだ。予測のほとんどは外れていた。だからこんな本に意味はあるのか、と眉に唾して読んだのが『2050年の世界』。副題にあるように、イギリスの経済誌「エコノミスト」編集部による未来予測だ(なお、日本の「週刊エコノミスト」とは無関係)。
なんとこの本の最終章は「予言はなぜ当たらないのか」である。周到にも「外れます」と宣言しているのか、と思いきや、そうではない。過去の未来予測はことごとく外れた、でも本書は違うよ、というのである。
なぜ当たらなかったのか。悲観的だったからだ、と本書はいう。本書の未来予測はおおむね楽観的だ。
「人々は、もっと豊かにそして健康になり、人間同士の結びつきはさらに強くなる。より持続可能な社会になっているだろうし、生産性は向上し、より多くのイノベーションが起きるだろう」と「はじめに」にはある。
たとえば人口問題。過去の未来予測では、爆発的に増える人口が、食糧不足などさまざまな困難を引き起こすといっていた。本書も2050年、世界の人口は90億人を超えていると予測。でも、なんとかなるという。90億人が食べていくには食糧生産高を70パーセント上積みしなければならないが、過去40年間で世界の穀物生産高は250パーセント上昇したのだから、と。このように、過去の変化を観察して、約40年後の未来を予測するのが本書のやりかたである。
もっとも、楽観的なのは世界全体についてであり、日本だけに限ってみると、いまひとつさえない未来が待っているらしい。本書全体を見回しても、世界史上最も高齢化の進んだ社会になること以外に目立った記述はない。一人当たりGDPはアメリカの六割に満たず、イタリアにもロシアにも追い抜かれている。なんだかこの予測、当たりそう。
週刊朝日 2012年10月12日号
政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない