地域安全マップとは、犯罪が起こりやすい場所を、風景写真を使ってつくった解説地図。たとえば、公衆トイレの男女の入り口が同じなら入りやすい、高い塀が続けば見えにくい。通学路でも、「ガードレールがないから『入りやすい場所』だね」「家の窓が見えないから『見えにくい場所』だね」など、子どもになぜ危険かを考えさせ、写真を撮ってマップにしていく。そして危険な場所には近づかない、警戒する。危険な場所にいるときは知っている人でも信用してはいけないことも教える。
家族など、身近な人からの被害を防ぐにはどうしたらいいか。これは非常に難しく、山田さんは「性教育が重要」だと言う。
「3歳から、保育所や幼稚園で、プライベートパーツ(水着で隠れるところと口)を教え、そこを触られたり、触らせられたりしたら、ノーと言えなくても、逃げられなくても、誰か信頼する大人に話をしようねと、繰り返し教えていくしかありません」
親が子どもに性教育をするのもいいが、父親や身内から性加害されている場合、子どもは声を上げることが難しい。だからこそ、保育所や幼稚園で教えることが重要で、忘れないように何度も繰り返し伝える。
また、前出の北原さんは、「性被害が、家族や親戚などの近しい関係の中でも起きるという知識を大人が持っていないといけない」と言う。子どもだからといって気安く触るのは避ける。父親と娘がいつまで一緒にお風呂に入るか、その配慮も必要だろう。子どもが被害や違和感を口に出したとき、否定せずに受け止めることも大人の役目だ。
■痴漢は小学生にも及ぶ
最近では、子ども同士の性暴力が問題になっているが、山田さんによれば、性加害をした子どもの多くが、自分自身も性虐待や身体的虐待を受けているなど問題を抱えているという。
「加害児童の将来を考えて、謝らせて終わりというケースが多いですが、どういう理由で起きたか、きちんとアセスメントして、その子の状況を改善しないと、本当の意味で守ることにはなりません」(山田さん)
最後に、痴漢被害について。この4月から電車通学が始まる人もいると思うが、痴漢は小学生にも及んでいる。痴漢抑止バッジをつけた9割以上の人が効果を感じているので、「痴漢抑止バッジの配布サイト」から取り寄せ、ぜひ用意してほしい。また、「Digi Police(デジ ポリス)」という警視庁の防犯アプリには痴漢撃退機能があり、画面表示もしくは音声で周囲の人に助けを求めることができる。
子どもが性被害に巻き込まれないためにも、大人が正しい知識で対応しなければいけない。(編集部・大川恵実)
※AERA 2023年3月13日号