野球の国際大会、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が3月8日に開幕する。史上最強と言われる日本代表(侍ジャパン)は3大会ぶりの優勝を果たせるのか。AERA 2023年3月13日号の記事を紹介する。
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第5回WBCで3大会ぶり3度目の優勝を狙う侍ジャパン。宮崎強化合宿で目立ったのは、大リーグ組で唯一初日から参戦したメンバー最年長の36歳右腕・ダルビッシュ有(パドレス)だった。他の選手たちと積極的にコミュニケーションを交わし、投手たちにアドバイスを送る。国際舞台で自分の能力を発揮できるかどうかは精神状態も重要だ。
今回のメンバーに「サプライズ選出」された宇田川優希(オリックス、24)は合宿当初、チームの雰囲気になじめずにいた。昨年育成枠から支配下登録に昇格し、セットアッパーで日本一に貢献したシンデレラボーイ。だが、今年は春季キャンプで中嶋聡監督に減量を命じられ、WBC使用球の扱いに試行錯誤していた。人見知りの性格で、侍ジャパンでもなかなか投手陣の輪に入れなかった。
■「宇田川さんを囲む会」
そこに救いの手を差し伸べたのがダルビッシュ。休養日に投手陣全員が集まった食事会を「宇田川会」と銘打って開催した。自身のツイッターで「宇田川さんを囲む会に参加させていただきました! 宇田川さん、ご馳走様でした!」とつづり、宇田川が中央で腕を組み、他の投手たちが囲む形で笑顔を浮かべる写真を投稿した。
侍ジャパンを取材するスポーツ紙記者はこう話す。
「ダルビッシュが宇田川を『愛されキャラ』としていじってくれて、本人も気持ちが楽になったのでしょう。今ではすっかりチームに溶け込んでいます。実戦でもすごい球を投げているので、今大会で重要な役割を担う可能性が十分にあります」
■WBC使用球に苦闘
雰囲気のいい侍ジャパン。だが、気がかりな点もある。投手陣がWBC使用球をどう操るかだ。日本野球機構(NPB)公式球に比べて滑りやすく、縫い目が高いとされている。しかもWBC使用球のほうが若干大きい。ボールの個体差もあるため、変化球がイメージした軌道で投げられない投手が見られる。